Leadership Insights
2012年末の総選挙で首相となった安倍晋三氏のもとで、日本経済の再生を目指すための経済政策が打ち出されました。アベノミクスと呼ばれる経済政策は、日銀による積極的な金融緩和、政府の財政出動による総需要の拡大、産業政策による成長分野への支援、という3つの主要な柱があります。今回はこのアベノミクスの中の金融緩和の効果を企業財務の視点から検証していきます。筆者は、金融緩和によるデフレの解消は限定的であると考えています。それは、日本企業の経営者の思考、そして行動パターンが、アメリカやイギリスの企業財務を前提にしたものとは大きく異なるからです。
 
21世紀のキャリア環境、人材育成環境の特徴の一つは、想定外変化であり、そのような変化に対応していくことがますます求められています。しかしながら、近年問題とされていることの一つに、学びの普遍性が低くなっていることが挙げられます。様々な調査によると、そもそも日本の教育が、学習したことの普遍性、持続性が低いという特徴があるそうです。学校の勉強ばかりでなく、企業内の人事評価や資格認定、世の中の資格制度も、日本は客観性重視のあまり、変化の時代に本当に大事な能力を見ていないのではないか、測りやすい能力ではなく大事な能力を測る能力が足りないのだ、と筆者は言います。普遍性の高い学びを実現するはじめの一歩は、基礎理論や歴史的背景といった部分を大事にすることなのです。
 
弊社で実施しているアクションラーニングプログラムは経営課題をテーマにする場合がほとんどで、最終回では自社の経営陣に対して戦略的な提言を行います。そんなとき、「こういう組織を作るべき」という組織の新設の提案はたいてい経営陣からの"受け"が悪いのだと筆者は言います。今、筆者はある会社でアクションラーニングプログラムを担当していますが、あるチームの提言内容が組織論に傾き始めました。組織論を出してしまうと経営陣には受けが悪いということを理解し納得してもらうために、なぜ組織論が受けないのか、改めて論理的に説明するとどういうことになるのかを考えてみました。
 
前回に引き続き、今号も高井よりイノベーションをテーマとした書籍をご紹介いたします。本号でご紹介するのは、Vijay GovindarajanとChris Trimble共著の“Reverse Innovation”です。“Reverse Innovation”の主張を要約すると、「イノベーションはまず先進国から、という思い込みは間違っている。新興国市場を本気で開拓したければ、新興国発のイノベーションが必須となる。それどころか、新興国発のイノベーションが先進国市場へ逆流することが今後は大いにありえる」というものです。 2回にわたり、イノベーションのあり方に新たな光を当てる書籍をご紹介いたしましたが、両書のメッセージは、現在日本企業が直面する難局を乗り切る上で、大切なヒントを与えてくれるのではないでしょうか。日本のイノベーションを覆う閉塞感を打破する上で、一条の光となるのではないかと筆者は考えています。
 
本号と次号の2回にわたり、筆者が最近示唆を受けたビジネス書を2冊ほど皆さんにご紹介いたします。2冊ともイノベーションをテーマとした洋書(米国)で、いずれも米国アマゾンの読者レビューで非常に高い評価を受けています。

今回ご紹介するのは、Ron Adner著“Wide Lens”です。この本のキーメッセージは、「イノベーションを成功させたいのであれば、エンドユーザーへの価値提供だけに目を向けていてはいけない。バリューチェーン全体を見渡す広い視座を持ち、関連する全てのプレーヤーにとってのメリットを考慮する必要がある」という一点に要約されます。ミシュランとデジタルシネマのケースなど、イノベーションの勝者と敗者、今後の行く末についての興味深い洞察が展開されます。イノベーションの成功確率を高めることに関心のある方には、是非ご一読頂ければと思います。