ダブルループラーニング


ダブルループラーニング(Double Loop Learning、DL学習)
ダブルループラーニングとは、1970年代にアメリカの組織行動学者クリス・アージリスによって提唱された学習理論で、既存の思考の枠組み(前提)での学習を繰り返しつつ、さらに既存の思考の枠組み(前提)を超えて新たな思考の枠組みを取り入れる学習プロセスを指す。既存の思考の範囲内で学習するプロセスをシングルループラーニングと呼び、既存の枠組みを超えて学習するプロセスをダブルループラーニングと呼ぶ。
例えば温室で植物を育てる際、適温を18度に設定してサーモスタットで室温を一定に制御したとする。室温が18度以下になったらサーモスタットのスイッチを入れ、18度以上になったらスイッチを切って、18度になるよう努力すること、これは所与の目標値に向かって試行錯誤する(PDCAサイクルを回す)プロセスであり、シングルループラーニングと呼ばれる。しかし、一定期間18度に室温を保ったにもかかわらず、植物が開花しなかったとしたらどうであろうか?そもそも前提とした適温=18度は正しかったのか?実は適温は違うのではないか?といった疑問が湧く。このように前提条件を疑う、前提条件の枠を超えて思考を拡げ試行錯誤を行う(目標値に向けたPDCAサイクルを回すだけでなく、目標値そのものを疑い、正しい目標値を見つけるために、もう一つ上位のPDCAサイクルを回す)ことを指して、ダブルループラーニングと呼ぶ。
外部環境の変化が激しい今日、シングルループラーニングだけで組織が環境に適応し生き残っていくことは難しい。過去の成功体験に基づく固定観念をアンラーニング(学習棄却)し、新たな知識や枠組みをダブルループラーニングで取り入れ、シングルループラーニングを通じてそれを反復・強化する。この二重学習サイクルを繰り返して進化できる組織だけが、競争優位を保つことができる。