コッターのリーダーシップ論


コッターのリーダーシップ論(Kotter’s Leadership Theory)
コッターのリーダーシップ論は、代表的な変革的リーダーシップ理論の1つで、1988年にコッターによって発表された。まずコッターはリーダーシップとマネジメントの違いについてを主張し、変革の時代に必要なものはリーダーシップである点を強調している。そして、リーダーシップにおける最も重要な要素を「リーダーの掲げるビジョン」であるとし、変革を実現する為の変革の8段階を提唱した。
更にリーダーの特性やスキルにも焦点を当て、リーダーに必須の能力として「対人態度」と「高いエネルギーレベル」を挙げている。
■リーダーシップとマネジメント
「リーダーシップ」と「マネジメント」は明確に別のものである。これまでの時代の中では「マネジメント」の統制が取れていることが経営において非常に重要視されたが、現代の変革の時代においては「リーダーシップ」の必要性を強く説いている。だが従来の「マネジメント」を全否定しているわけではなく、組織内においては「マネジメント」も「リーダーシップ」も同時並行的に必要なものであり、それぞれの役割や課題達成プロセルの違いを明確にしている。
リーダーシップ | マネジメント | |
役割 | 組織をより良くするための変革を成し遂げる | 複雑な環境にうまく対処し、既存のシステムの運営を続ける |
課題達成 プロセス |
①進路の設定 ②人心の統合 ③動機付けと啓発 |
①計画立案と予算策定 ②組織化と人材配置 ③コントロールと問題解決 |
■変革の8段階
急激な市場の変化、消費者の多様化、企業を取り巻く環境は常時「変化」にさらされている。そうした環境下においては、企業自らも常に「変革」を行っていかなければ生き残っていくことは難しい。組織を変革させる為に必要なのが「リーダーシップ」であり、「変革」は8段階のプロセスによって実行して行く事が望ましい、とされる。
段階 | テーマ | 課題 |
第1ステップ | 緊急課題であるという認識の徹底 | ・市場分析し、競合状態を把握する ・現在の危機的状況、今後表面化しうる問題、チャンスを認識し、議論する |
第2ステップ | 強力な推進チームの結成 | ・変革プログラムを率いる力のあるグループを結成する ・1つのチームとして活動するように促す |
第3ステップ | ビジョンの策定 | ・変革プログラムの方向性を示すビジョン ・戦略を策定・策定したビジョン実現の為の戦略を立案する |
第4ステップ | ビジョンの伝達 | ・あらゆる手段を利用し、新しいビジョンや戦略を伝達する ・推進チームが手本となって、新しい行動様式を伝授する |
第5ステップ | 社員のビジョン実現へのサポート | ・変革に立ちはだかる障害物を排除する ・ビジョンの根本を揺るがすような制度や組織を変更する ・リスクを恐れず、伝統に囚われないような考え方や行動を奨励する |
第6ステップ | 短期的成果をあげる計画策定・実行 | ・目に見える業績改善計画を策定する ・改善を実現する・改善に貢献した社員を表彰し、報奨を支給する |
第7ステップ | 改善成果の定着と更なる変革の実現 | ・勝ち得た信頼を利用し、ビジョンに沿わない制度・組織・政策を改める ・ビジョンを実現できる社員を採用し、昇進させ、育成する ・新しいプロジェクト、テーマやメンバーにより、改革プロセスを再活性化する |
第8ステップ | 新しいアプローチを根付かせる | ・新しい行動様式と企業主体の成功の因果関係を明確にする ・新しいリーダーシップの育成と引き継ぎの方法を確立する |
■リーダーに必須の能力「対人態度」と「高いエネルギーレベル」
変革を起こすためには、組織内外にいる多くの人間とコミュニケーションを交わし、関係を維持しなければならない。その意味で、内向的な人間はリーダーになれない。変革を起こそうという強烈なエネルギーがないと、組織を率いてビジョンを達成することは出来ない、と主張している。
こうした「対人態度」「高いエネルギーレベル」というリーダーとしての能力は、子供時代、仕事の経験、所属した組織の文化などに大きく影響される、とも説明している。
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