(その2)アクションラーニングとは


一言にアクションラーニングと言っても、取り上げるテーマ、成果イメージ、参加者、進め方などによって色々なタイプがあります。
テーマに関して言えば、競争力が下がっている事業を取り上げ、建て直しの方策を考えるもの(事業戦略の再構築)、今行っている事業の成長を加速させる戦略を立案するもの(事業戦略の構築)、全くの新規事業を開発するものなどもあれば、組織・風土に関する課題を取り上げ、企業風土を変える方法を立案するもの、新たなカルチャー、行動規範を定着させていくものなどがあります。
また、成果イメージに関して言えば、あくまでも研修としてスキルやものの考え方、課題の詰め方などを学ぶことに主眼を置くものから、経営陣の意思決定を促し実際の課題解決を図ってしまうもの、また、ナレッジの共有化や一体感の醸成などを目的とするものなどさまざまです。
参加者の構成についても色々なパターンがあり、社長や役員を中心に進めていくものから課長クラスの方中心に行うもの(比較的階層的、あるいは組織横断的に行う)、また、組織単位で部長、課長、課員に関わっていただくものなどがあります。
進め方についても、受講生一人に対してエデューサーが一人つくもの、数人の受講生に対してエデューサーが一人つくもの、複数のエデューサーが複数の受講生に対してつくものなどがありますし、1~2ヶ月で終わるものから、半年~10ヶ月くらいかけてじっくり行うものまであります。
いずれにしても、何をテーマにしどのような成果を求めるのかをじっくり聞かせていただき、話し合いながら、最適なプログラムを設計し提案するところからスタートするのが私たちの基本スタンスです。
アクションラーニングは体験から学ぶ学習のことです。チームワークの大切さを学ぶために、みんなで合宿して木に登って助け合う、というようなものもありますが、インヴィニオの提供するプログラムは企業成長やリーダー人材の輩出を狙っています。
実際にプロジェクトを起こして参加者に自ら主体的に動いてもらって、その中で、戦略の立て方や組織の動かし方を体得してもらうのが狙いです。体得されたことであれば、その後私たちの支援が無くても自立的に動けるはずだ、という信念のもとに運営されています。
前回のコラムで、具体例などを教えて欲しいというご要望を何名かの方から頂きましたので、最近筆者が関わった、あるいは今日現在関わっている案件などを事例にしながらアクションラーニングの本質を説明したいと思います。
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アクションラーニング(AL)は大きく分けると2つのフェーズに分けることができます。前半は、ALを乗り切るための武器を与えるフェーズです。後半は実際に自分の会社の課題を解決していくフェーズです。
このシリーズを読んでいただくと次第に皆さんにもお分かり頂けると思いますが、ALは経営コンサルタントが用いる手法を使う部分(それ以外の部分も多いですが)が多分にあります。ですので前半では、コンサルティング経験者や現コンサルタントが、それらのスキルを与えるための教育を集中的に行います。
1)ビジョンの策定方法、2)戦略策定の手法、3)問題解決の手法、4)またこれらを行うための基礎的体力としての思考力、分析力の鍛錬などが主たる内容です。また、私たちはリーダーにとって不可欠な資質の一つとして、「次に何をすべきか決められる能力、設定出来る能力」=What構築力を重視していますので、上記(1)~(4)と絡めながらWhat構築のアプローチなどを学んでもらいます。
そして 、前半で学んだスキルをもとに自社や業界を多角的に分析して参加者自らがWhatを構築することを促します。
インヴィニオではWhat構築にあたって3つの切り口を用いています。
一つは、「なすべきこと」を考えるアプローチです。例えば、利害関係者の期待値と現状のギャップを明らかにすることによって、何に力をいれなくてはいけないか課題を特定します。顧客が求めていることと自社の提供している価値にズレはないか、株主の期待値に対して十分なパフォーマンスが出せているか、親会社の期待値に対して子会社は十分な価値を提供しているかなどを検証していくアプローチです。市場調査や利害関係者からのヒヤリングを行うことで気付きが生まれます。また、最近では競合の視点に立って自社をつぶす戦略を考えることから、自社の弱点、盲点を明らかにする手法(Competitive Intelligence:CI)も取り入れたセッションも行っていますが、これも参加者には大きな気付きを与えるようです。
二つ目のアプローチは、「やれること」からのアプローチです。何か新しいことが「やれる」ためには2つの要件を満たす必要があります。それは事業機会が存在することと、その機会を捉えるだけの強みを持っていることです。いわゆるSWOT分析のアプローチです。
三つ目のアプローチは「やりたいこと」からのアプローチです。オーナーシップを持って取り組んでもらうためには、自分としても実現したいことやチャレンジしたいと思っていることでないとなかなかやる気は起こらないでしょう。リーダーの意思、組織として燃えること、それをコーチングや組織診断のアンケートなどを通じて明らかにし、本気で取り組んでもらえることを明らかにしていきます。
この3つの切り口でそれぞれ浮き彫りになったことを重ね合わせたテーマを取上げるのが、何といってもALのKFSです。
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土井 哲
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