Leadership Insights
組織人事の世界はややもすると、哲学や思想の世界、つまり人文科学的な世界で語られがちでしたが、最近は経営学や経済学、つまり社会科学的な視点が重要視されるようになってきました。そして心理学や社会心理学、さらには哲学などが、脳神経科学や分子人類学などと結びつき始めています。 筆者は、これからは社会科学と自然科学の融合による世界観の形成が重要になってくるのではないかと感じており、人事を人文科学ではなく、社会科学と自然科学、そして歴史的視点を加えて考えることが重要なのだと考えています。
 
組織人材マネジメントには、大きく二つのタイプの仕事があります。経営が意思をもって決めたビジョンや戦略を実行するために行う攻めの人事と、経営的に大きなダメージを未然に防ぐために行う守りの人事です。過去日本の人事は守りを重視してきたわけですが、攻めの戦略に沿ってギアチェンジが行われている会社も少なくありません。しかしながら、守りの人事の重要性が低下したわけではなく、特に今の時代だからこそ重視しなければならない組織人材マネジメントに起因するリスクがあると筆者は言います。筆者が特に重視しているのは、人材不足のリスク、プレッシャーからくる問題行動のリスク、マニュアル的発想による思考停止のリスクの3点です。このようなリスクに対処するにはどうしたらよいのか、具体的な事例をもとに考えていきます。
 
“モチベーション”というキーワードがもてはやされて久しいですが、筆者は日本では多様な問題を精神論、やる気の問題に収斂させすぎているのではないかと感じることがあります。昔の若手社員の仕事は、やる気でカバーできる単純化された仕事から始まったため、その間にいろいろ学べる助走期間が長かったのですが、今では難易度の高い仕事をいきなり担当する上学ぶ機会も大きく減っているので、必要なのは能力開発人材育成なのだと筆者は言います。もちろんやる気、モチベーションにまったく意味が無いと言っているわけではなく、まず理解しなければならないのは、明確な方向性を伴わないムード的なやる気は、組織のパフォーマンスには結びつかないということです。組織のパフォーマンスを向上させるのは、明確な目的意識のあるコミットメントなのだと筆者は考えています。
 
近年、組織文化に対する注目度が高まっています。筆者自身も企業変革に関わる仕事をしていると、組織文化そのものが変革のボトルネックになることもあり、組織文化変革に取り組む必要性を痛感しています。そんな折に、とある依頼がきっかけで、自社の組織文化を可視化し、議論するためのダイアログマットというものを開発しました。これまで、いろいろな会社で、このダイアログマットを使って、自社の組織文化を可視化し、議論していただきました。もちろん、どのような組織文化が良い、悪いというわけではなく、自社の進むべき方向性、戦略に、組織文化が整合しているかが重要になってきます。
 
日本をはじめ先進国の産業構造は高度にサービス業化しつつあります。しかしながら日本では、そもそも外国に比べて、製造業とサービス業、大手企業と中小企業の賃金格差が大きく、若年者離職率なども差が大きい傾向があります。いわば雇用の量を支える新サービス業の雇用の質が低いことが、これからの日本全体の課題であると筆者は言います。それでは、サービス業の雇用の質を上げる人材育成のポイントとは何なのでしょうか?新サービス業の多くは、個別性の高い仕事が多いため、感受性と応用力の開発が大きな課題になると筆者は考えています。