Leadership Insights
ここ10年でゲノム分野の研究は急速に進んでいます。ゲノムビジネスと呼ばれている個人対象のゲノム解析サービスについても、遅ればせながら日本でも最近いくつもの会社がビジネスをスタートさせています。なぜこういうゲノムビジネスと企業人事が関係あるのか、疑問に思う人もいるかもしれませんが、筆者は近い将来大きな影響が出ると予想しています。ゲノムは究極の個人情報であり、米国などでは既にゲノム情報の取扱いに関連した法律が整備されつつあるそうですが、日本はただでさえ法対応が後手に回る国で、かつゲノム活用が遅れている国なのでまだ法整備が追い付いていないのが現状なのだそうです。 ゲノム情報の企業人事の取り扱いの倫理規定は、企業人事のプロフェッショナル達が集まって議論をし、いち早く倫理規定を作るべきであり、それを法整備にもつなげるプロフェッショナルの自己管理の原則をここでこそ積極的に実行すべきではないかと筆者は提言しています。会社都合で社員のキャリアや人生を管理するという発想ではなく、社員個人の人生とキャリアを切り開く努力と能力を支援することで、企業競争力にもつなげていくキャリア自律前提の人事施策が今後ますます重要になると理解すべきではないでしょうか。
 
経営人事、戦略人事などの言葉は最近よく耳にする機会が増えていますが、特に経営人事という分野は筆者がパイオニアの一人でもあります。今回のコラムでは、経営人事の視点でものを考えるのは、他の人事の視点とどのように違うのかについて考察していきます。経営人事の視点ではないものとして、筆者が挙げているのは「会社秩序の番人である人事」、「全知全能の人事」、「外部環境対応の人事」です。それぞれの視点は、過去からどのように存在して、現在の役割はどうなっているのかを解説しながら、真の経営人事の視点とは何かを考えてみましょう。
 
社会的視点で雇用について論じる場合、今までは雇用の量的側面が重視されてきました。その代表が失業率であり、有効求人倍率です。しかしながら、最近雇用の質についての議論が盛んになされつつあると筆者は言います。質を数値で把握しようとした試みが、業種別の3年以内の離職率というここ数年公表されているものですが、業界ごとに数値がかなり違っていることは大きな衝撃を与えました。 雇用の質を論じるときに、考えるべきポイントは、働きやすさ、そして働き甲斐や成長実感です。若い人たちの場合には、働きやすさよりも、まず働き甲斐がより重要な要素であり、かつ、企業の業績にとっても中長期的に貢献しうるものになるのではないかと筆者は考えています。
 
近年多くの企業で働き方の問題への関心が高まっています。早朝出勤や、残業削減、休暇の取得を増やすなど、具体的な取り組みのお話もよく聞かれます。しかし、筆者は日本企業にとって働き方改革はとても奥の深い問題だと感じており、働き方改革の入口で最も重要なのは、経営幹部や管理職が、なぜ、何のために働き方改革をするのか、それをしっかり腹落ちして理解することにあるのではないかと言います。働き方改革の入口は多様ですが、今回は4つのポイントについて考察していきます。
 
筆者が長年活動の拠点としてきた慶応大学SFCのキャリアリソースラボラトリーが設立されたのが2000年5月、15年前になります。社会情勢や時代背景もあり、キャリア自律の最初のターゲットは20代若手社員でした。それが最近明らかに変化してきているそうです。特に近年は、バブル入社組の40代や、定年延長や役職定年などが一般化した50代のキャリア自律が大きな課題になってきています。安倍政権の経済再生政策や地方創生政策の流れで、国もミドルシニアの流動化に本格的に取り組み始めています。今回のコラムでは、筆者も検討委員としてかかわりのある政策を紹介し、その背景に潜む課題について考えていきます。