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ティシーの現状変革型リーダー論 The Transformational Leader

現状変革型リーダー論は、1986年にノール・M・ティシーによって発表された、変革的リーダーシップ理論の1つ。コッターのリーダーシップ論と同様、日常の反復業務やルール通りの管理に長けた「マネジャー」ではなく、変革を実行する「リーダー」のあり方を明確に定義した。リーダーがビジョンを提示し、それを実行させるべくメンバーに働きかける、という点もコッターと同じである。


また、リーダーが組織のあらゆる階層に存在し、リーダー自らが次世代のリーダーを生み出していく仕組みづくりが大切である、という「リーダーシップ・エンジン」という概念を主張している。


ティシーの現状変革型リーダー論・リーダーシップ・エンジンの概念は、クロトンビルで所長を務めていたということも関係して、GEやジャック・ウェルチにおけるリーダーシップ教育のあり方に大きく影響を与えている。


■リーダーが行うべきこと


1)ステップを辿りながら変革を実行する
現実を直視し、現況をあるがままに捉える
適切な対応策をとる


2)他者を導き、動機付け、物事を達成する
リーダー自身のアイディアと価値観によって人々の考え方を変え、人々が行動できるように激励し、他者を動かして物事を達成させる。あらゆる機会に自分のメッセージを伝え、支持を得るよう働きかける。


3)組織システムへ働きかける
リーダーは以3つのレベルにわたる組織のシステムに対し、常に働きかけていくことが必要である。


1.技術的システム(経営資源の組織化)
2.政治的システム(従業員にやる気を起こさせるために権力、影響力、報酬をどのように使うか)
3.文化的システム(従業員を結束させる規範と価値観)


■リーダーシップ・エンジン


ティシーは、リーダーが組織のあらゆる階層に存在し、彼ら自身が次代のリーダーを次々と生み出していく仕組みこそ、組織が永続的に「勝ち」続けていく為に必要であると提唱している。他者の能力を伸ばすこと、継続的に変革を起こすことの出来るリーダーの育成を行える企業こそが競争優位を保つことが出来る。


1)全階層に必要なリーダー


急速に変化する今日の世界で、一貫して他者の先を行くためには、組織はすばやく決然と行動しなければならない。組織の全階層で、人々がアイデア、価値観、エネルギーと*エッジ(大胆な意思決定力)をもって、すばやくかつ適切に意思決定を下し、行動することが必要である。そのためには、現実を把握し、創造的に発想し、行動を起こせるリーダーが組織の各層にいなくてはならない。スピードを出す唯一の方法はリーダーを持つことであり、変化に対応できる組織だけが永続的な繁栄を謳歌する。


2)「教育する組織」


勝利する企業には、リーダーを高く評価し、リーダーシップに期待し報いる文化があり、リーダーの育成に時間と資金を積極的に使っている。あらゆる機会を用い、会社の全階層でのリーダーシップを奨励し、トップに立つリーダーが他のリーダーの育成に自ら取り組み、慎重かつ体系的にリーダーを育成している。リーダーの目標は「学習する組織」のさらに上をいく「教育する組織」を創り出すことであり、組織の各層にいるリーダーは、自分が学んだことを自らすすんで他者に教えるという責任を持っている。


3)育成すべき4領域


リーダーがリーダーを育成する際に、育成すべき領域はアイディア・価値観・エネルギー・エッジという以下の4つの領域である。

1) アイディア
  何故そのビジネスに携わるのか、どうやって付加価値を加えるのか、組織の様々な部門が互いにどのように関わりあうかを説明する明確なビジネスアイディアは非常に重要な意味を持つ。リーダーは、常に市場・経済状況・技術的環境に合ったアイディアを持っている必要がある。アイディアが組織で働く従業員によって共有され、理解されていることが更に重要となる。自分たちの使命が何であり「何を」目指しているのかを部下(あるいは従業員)にはっきりと理解させる。リーダーのアイディアの存在によって従業員はビジョンを共有して一つにまとまり、自分でもアイディアを発展させ、行動に出て組織を動かしていく。

2) 価値観
  リーダーは、望まれる行動と受け入れられない行動をまとめた、はっきりと定義された価値観をもち、それを厳格に実行に移す。価値観は、従業員に「行動のとり方」を示し、従業員はそれによって理解を共有して独立した行動をとることができるようになる。価値観は、競争力を高めるツールであり、組織がスピーディーで適切な動きをするために欠かせない。リーダーは絶えず組織の価値観について考え、説いてまわり、組織全体に植え付けていく。彼らは部下に、価値観を吟味し、全力を尽くして毎日それを実行に移すよう励まし、日常的な業務の中でどのように実践したらいいのか理解させる。また、価値観はアイディアと同じように継続的に再検討を加えるべきものであり、組織の目標と調和しなくなったときには、変える必要がある。

3) エネルギー
  競争の激しい社会では、エネルギーを持って敏速に行動できるかが勝敗を分ける。問題に打ち勝ち、新しいチャレンジに応じるためにエネルギーは建設的に活用される。リーダーは、従業員のエネルギーをどれだけ高めることができるかを考慮して業務の遂行方法を考え出し、経営の進め方を設計する。また、従業員達に決定を下す準備を十分にさせ、決定事項が確実に履行されるように体系的なフォローアップをセットする。ありとあらゆる機会を利用して、全ての従業員の中にエネルギーを創出することに取り組み、従業員に決断力と自信を与える。

4) エッジ
  エッジとは、厳しい決断を下す力、よりよい将来のために現状に甘んじず、勇気をもって自己の信念を断行することである。自分が信じるアイディアや価値観を実行に移し、困難をそのままに放置しないこと。エッジには、以下の2つのカテゴリーがある。
 
1. ポートフォリオに対する決定
時間、資金、人員をどこに投資するか決定を下すこと。
2.人間に対する決定
現実を直視し、人々に対して厳しい決定を下すこと

エッジを教え育成するためには、決断が不可欠な困難な状況を連続的に経験させ、常にフィードバックとサポートを与えることが必要である。まずリーダーとなるに相応しい人物を選び、経営資源を有効利用しなければならないような状況に置いて、比較的大きな意思決定の権限を与える。成功すると、もっと責任の重い大きな試練を伴う新しい仕事を任す。また、失敗したとしても、過ちを学習のための経験として利用することは、勝利するリーダーが従業員にエッジを育てることを奨励し、リスクを犯して厳しい決定を下すよう奨励する方法の一つである。たとえ大きな過ちを犯しても、キャリアが終わりになることはないという保証があれば、従業員は自信を持って意思決定を行うことができる。


■ストーリー


後進を育てるリーダーとして最も重要なことは、アイディア・価値観・エネルギー・エッジという4つの領域にまたがる教育的見地を織り込んで、人々の行動に結びつけるストーリーを部下に提示することである。自分が考えるプログラム、方針、計画のメリットを「聴衆に納得させる」ことによって、部下たちは行動力を喚起される。


ティシーによれば、これまで成功してきたリーダーは人々をひきつけ、エネルギーを与える為に必ずストーリーが用いられていた。そして成功したリーダーのストーリーには普遍的に以下の3つの要素が盛り込まれていたという。


1.変革の論拠
2.我々はどこへ行こうとしているのか
3.どのようにして我々はそこに到達するのか


例えばジャック・ウェルチは、GEが何故変わらなければならないのかを描き出し、GEの新しい未来について述べた。その為にGEでこれからやらなければならないことを明確に社員に対して訴えたのである。



■関連用語
リーダーシップ理論の変遷
変革的リーダーシップ理論
コッターのリーダーシップ論
ビジョナリー・リーダーシップ論
ノール・M・ティシー
ジャック・ウェルチ
クロトンビル


 

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