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ダイバーシティ・マネジメント Diversity Management

ダイバーシティ・マネジメントとは、多様な価値観を企業の活動に取り込むことによって、成果に結び付けようとする企業活動のひとつ。日本では特に「女性活用」というイメージが強いが、実際には人種や年齢(高齢者)、性的志向、出身業界、生活環境、文化的背景などを含む多様な価値観を企業としてどう活用していくか、という広範な取り組みのことを指す。

変化の激しいビジネス環境の中で、「ひとりひとりの独自性・多様性を活かし、市場に柔軟に対応して成果を出せるような組織にすること」がダイバーシティ・マネジメントの目的であり、決してCSR的な「女性の活用」を促進する為のものではない。

■歴史的経緯
ダイバーシティ・マネジメントの概念は、1960年代にアメリカで公民権運動が起こった事をきっかけに生まれてきた。当時のアメリカでは、人種的マイノリティ(黒人やヒスパニック、アジア系人種など)が明らかに差別される対象として存在していた。社会的な差別の是正を目指して制定されたのが1964年に施行された新公民権法(年齢・性別・人種などによる一切の差別を禁止する法律)である。以降、公式には企業は人種・性別といった要因で差別的扱いを行うことは禁止された。この時特に重視されたのは、人種的マイノリティだった。
1970年代に入り、アフリカ系アメリカ人の従業員や女性従業員が、差別を受けたことを理由にアメリカの大企業に訴訟を起こし、企業側が全面敗訴した。賠償金として多額の金額を企業が負担する事態が起こる。当時の企業にとって、ダイバーシティへの対応は賠償によってかかる負担を減らすために必要なコスト、という考え方が主流だった。

1980年代に入ると、CSRの積極的施策の一環として企業がダイバーシティ・マネジメントに取り組みだした。例えば「女性の活用に積極的な企業」、「人種やバックグラウンドに関係なく、誰もが活躍出来る企業」というイメージを打ち出すことによって、企業イメージを高め、企業価値を上げる、という考えに基づくものである。

1987年ダイバーシティ・マネジメントに対する企業の取り組みを加速させる、「Workforce 2000」という労働白書が発表された。労働力について、その後15年程度の推移を予測するこの白書によると、1)今後急速に労働力が高齢化・女性化していく 2)これまで労働力人口の中心を占めていた白人男性の割合が、新規参入者で言うと47%から15%まで急減するだろう。という予測だった。

当時のアメリカは、重厚長大型の従来型の産業の成長が軒並み鈍化し、更には日本企業の躍進によって、大打撃を受けた時期である。製造業からサービス業への大幅な転換点にあり、企業側も人事や組織戦略を大きく見直す必要に迫られてきた。これまで労働人口の主流だった白人男性の割合が急激に減少傾向に陥ることによって、これまで戦力外とされていた女性、非白人、障害者、高齢者などを積極活用していく必要に迫られた。この時、具体的な手法としてダイバーシティ・マネジメントが利用され始めたのである。

更に2000年代に入ると、ビジネスのグローバル化が更に進展し、世界の各地域でのM&Aが増えてきた。異なる文化背景、バックグラウンド、習慣などを持つ組織同士が共生する機会が飛躍的に増え、多様な価値観を持つ人々、組織を最大限に活用していくには、白人男性の代替戦力として消極的に非白人や女性を活用するのではなく、彼らの持つ多様性を競争力の源泉として積極活用していく様になってきている。実際に、多様になった市場のニーズに対応する為には、企業側も当然多様な人材を活用し、それぞれの従業員たちのバックグランド・ライフステージに合わせた働き方を企業が提供する必要がある。また、女性が積極活用されている企業は就職先としても人気が高く、優秀な人材を惹き付ける有効な手法となっている。

●日本における先進事例

1)日産自動車
トップのイニシアチブのもと、ダイバーシティを「企業と市場を繋ぐ架け橋」としてビジネス戦略上の必須条件に位置づけている。日本市場では自動車購入の意思決定の60%に女性が関与しており、商品やサービスの魅力を高める為に経営戦略としての女性社員の活用に取り組んでいる。

<施策>
・女性社員の活用を目的として、ダイバーシティデベロップメントオフィスを設置(日本)
・日産コーポレート・ダイバーシティ・イニシアチブを設置し、多様性に配慮した職場作りやサプライヤーの多様性の推進(アメリカ)


2)ソニー
2003年5月に国内外のグループ各社が共通して遵守すべき「ソニーグループ行動規範」を制定。雇用における機会均等や差別の禁止などを徹底すると共に、社員に対する教育・研修に努めている。社員が参画するボランティア活動も推進。

<施策>
・ソニーグループ行動規範における人権尊重規定(世界)
・国内ソニーグループの人権担当者によるネットワークを構築(日本)
・人権啓発フォーラムの開催(日本)
ダイバーシティ・ワークショップを実施(アメリカ)
・人事部門に女性の登用推進等を目指した「ジェンダー・ダイバーシティ・プロジェクト」を発足(日本)
・障害者雇用推進室設置(日本)


3)ベネッセ
扱う商品・サービスの多くが女性を対象としたものだった為、女性登用や育児などの制度活用が商品開発や競争力向上に直接繋がっている

<施策>
・女性のみならず男女共に働きやすい企業を目指し、70年代から男女均等処遇の徹底、ファミリーフレンドリー施策の充実
・男女社員の子育て・教育・介護経験が本業に活きる。本業のビジネスプロセスにファミリー・フレンドリー施策が組み込まれている
・女性管理職比率32.3%


4)資生堂
従業員の約7割が女性。常時300人近い女性が育児休業中。日本初の育児休職者復帰サポートオンラインサービスを持つ。

<施策>
・男女共同参画活動「ポジティブ・アクション5つの目標」を設置
・「ジェンダー・フリー委員会」を設置、男女を問わず能力を発揮出来る企業風土作り


5)日本GE
企業としての目標を達成する戦略にダイバーシティを位置づけ、GEバリューやネットワーク活動を実践することで、多様性の受容を企業の成長に欠かせない価値として組織に深く根付かせられることを実証している。

<施策>
・女性社員に向けた情報提供、教育・研修、イベント等の立案・実行をする「ウイメンズ・ネットワーク」の設立
・障害者同士や周りで働く社員が意見交換する「バリアフリー・ネットワーク」の構築
・グローバルな社員ボランティア「ダイバーシティネットワーク」と人事との連携
・2004年度マイノリティ系(女性、米国マイノリティ、非米国市民)占有率 管理職33%、上級役員40%(アメリカ)


6)日本IBM
ダイバーシティを経営戦略として実践し、企業の成長に直結させている。社員の多様性を高める事で多様な潜在市場を開拓する事を目指し、アジア人、黒人、ヒスパニック、ネイティブアメリカン、障害のある人、女性、白人男性、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーそれぞれの資質を高めるタスクフォースを遂行している。その結果、マイノリティ市場を拡大し、企業成長に貢献している。

<施策>
ダイバーシティ教育
・マイノリティグループ特有の利害観点を追及するエグゼクティブ・タスク・フォース制度
・女性活用を目指したジャパン・ウィメンズ・カウンシル設置(日本)
・障害者雇用に関する推進体制や社内啓発体制の整備


7)P&G
ダイバーシティに取り組む目的を①消費者に対して優れたサービスを提供出来る②社員が充実感をもって最大限の力を発揮出来る③優秀な人材を確保できる、という3つの意義に基づき、経営目的の達成に据えている。日本では地域特性を反映して、女性社員に注目した施策を取っている。

<施策>
・社員の約5割が女性、国籍では27カ国出身の社員が日本で活躍
ダイバーシティフォーラムの開催
・国際女性ビジネス会議を毎年開催
・社員の評価項目にダイバーシティへの貢献度を組み込み、年度ごとに個人の評価に反映させている
・女性の登用 課長職クラス 26%、部長職クラス 23%






 

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