Leadership Insights / 若手社員は順調に育っているか

若手社員は順調に育っているか

(2006年04月19日)

皆さんの組織では、20代の若手社員は順調に育っているでしょうか。成長実感のなさから、簡単に会社を辞めてしまう若手社員が増えたり、昔のように新入社員が定期的に入社する環境が無くなり、職場で孤立しているなど、様々な問題意識が提起されています。我々慶応大学SFCのキャリアラボでは、私の主催する研究会の参加企業11社の協力を得て、若手社員の成長実態調査を、昨年12月に行いました。その結果が明らかになってきたので、いくつかの分析を紹介したいと思います。

この調査はメーカー4社、総合電機3社、BtoBサービス業3社に地方自治体1組織の11組織で、20代社員合計1300人から回答を得たものだ。本人たちの成長実感と他のどんな項目が相関が高いのか様々な分析を行っているが、まず第一にはっきり言えることは、若手成長に最も重要なのはチャレンジングな仕事そのものだということだ。上下コミュニケーションや研修参加時間といったものより、チャレンジングで自己裁量度合いの高い変化の激しい仕事を行っているかどうかのほうが、はるかに相関係数が大きい。さらに言えば、「あなたの職場は個人が眼に見える具体的な成果をださなければいけないという雰囲気の強い職場ですか」という質問も、この一連のチャレンジングな仕事に関する質問と関連が深く、同一の因子として括られ、単独でも正の相関がある。

つまり育成主義と成果主義は相反するものではなく、チャレンジングな仕事を通じた健全な成果プレッシャーが、最も人を成長させるということだ。但し注意が必要なのは、同時にこれらの相関の最も高い質問には、「あなたの上司はあなたはどうしたいか、どう考えているか問いかけが多いか」というのもある。コーチング的マネジメントスタイルによる健全な成果プレッシャーが求められている。

さらに2番目に相関が高い一連の質問はチームとしてのまとまりであり、チームとして協力し、教えあい刺激しあって高い成果を目指す雰囲気との両立が条件だろう。さらに他の様々な分析などと照らし合わせると、組織としての新しいチャレンジの中での繁忙は成長につながるが、陳腐化したビジネスモデルや組織モデルをそのままにして、頑張りで売り上げや利益を目指す、疲弊型繁忙はまったく逆効果といえるように思える。

それでは若手の孤立感はどうだろうか。あなたの組織には他にどのくらい20代の同年代の社員がいますかという質問と成長実感は、予想通りはっきり相関が見られた。一人もいないから1-2割、3-4割、5割以上になるに従って、成長実感の平均点は明確に大きくなっていく。さらに他の分析とあわせて考えると、若手の多い職場は若手社員にもチャレンジングな仕事が行きやすく、その結果上司部下の育成のための制度的コミュニケーションなどが多少手薄でも成長実感が高まりやすいが、逆のケースでは、上司部下の関係を強化する制度的取り組みは、効果は無いわけではないがそれだけでは到底不十分ということのようだ。

成長のためだけに若手を多く採用することはできないが、若手の育成を集中的にいくつかの組織で行うとか、上下序列によらない学習する組織の構築など、いくつかのアプローチが必要となるだろう。

さらにもう一つ、ある程度予想されたこととはいえ、個人のコミュニケーションスタイルが成長実感に大きく関係していることには驚かされた。仕事以外の普段のコミュニケーションで、人と合って直接話をするという習慣を持たない人の成長実感は明らかに低い。携帯を含む音声の電話でも似たような傾向が認められるが、メールの頻繁なやり取りはそのような明確な相関が無く、明らかにリアルコミュニケーションの希薄なライフスタイルを、メールなど文字情報だけのコミュニケーションで代替できていないということを表している。この問題は人間的成長の問題そのものとも関係し、根が深い。

この問題と多少関係があるかもしれないが、職種別に見たときにも成長実感の違いが現れる。11社通して、管理事務部門と営業職、専門職、ソフト系技術職、ハード系技術職と分けたとき、最も成長実感が高いのは営業職であり、最も低いのはハード系技術職だった。他の様々なデータと照らし合わせると、物づくりの危機は製造現場の2007年問題以上に、開発現場の技術者の閉塞状況にあるような気がする。例えばハード系技術者は、先ほどの問いかけ方マネジメントが最も弱い。コストプレッシャーの強い中で、細かく分業された仕事を、旧態依然の管理的ピラミッド組織で担当し、本人自身も普段のコミュニケーションスタイルでは文字コミュニケーションに偏るため、ますます閉塞感が高まっているという仮説だ。

全体を通して言えることは、部下と上司の育成に関するコミュニケーションの改善はもちろん必要だが、若手成長のためには職務編成、組織マネジメント、上下以外の日々のチームコミュニケーションなどが課題となり、さらに言えばビジネスモデル、組織モデルの抜本的改革のリーダーシップがベースにあることが最も望ましいとうことだろうか。

この分析や、ラボの研究会での議論、さらにはリクルート社の雑誌「ワークス」に連載中の「成長の危機」の内容などを組み合わせた、若手人材育成に関する単行本を5月に上梓の予定なので、参考にしていただければ幸いです。

高橋 俊介


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