Leadership Insights / 立ち上がった新制度

立ち上がった新制度

(2006年04月19日)

エデューサーという仕事をしていて、何よりも喜びを感じるのは、やはり、参加者の方が、自社の問題を他人事ではなく自分の問題としてとらえ、その解決にむけてオーナーシップをとってくれる時である。

一昨年前から、あるメーカーで1年間の幹部育成プログラムをやらせていただいている。そのプログラムの後半では、自社が直面する喫緊の課題を特定し、解決策や戦略を考えるのだが、第一期のときに、一つのテーマとして企業風土改革を取り上げ、研修参加者のうち4名がそのテーマを深掘りすることになった。

守秘義務の関係で詳しくは書けないが、この企業では実質的に年功序列となっており、一般社員からみたときに必ずしも十分な資質とスキルを備えていない人が管理職についているケースが散見された。アンケートを行なって詳しく調べてみると、そのような管理職は十分に部下を指導、育成、評価できておらず、これが一般社員のモチベーションの低下につながっていることがわかった。そこで、その解決策として、最終回では、“役職者への登用を決める際に、これまでの上司推薦だけでなく、専門のアセッサーを育成していわゆるコンピテンシーアセスメントを行う事”が提言の一部として発表された。

この提言は、その後経営陣によって検討され、2006年からアセスメントを導入することが昨年正式に決定された。(私たちのアクションラーニングで提言された内容は、このように結構実行に移されることが多い。)

この分野はインヴィニオのコアコンピテンスが発揮できる分野でもあり、提言をお手伝いさせていただいた関係もあって、2006年からの本格運用に向けてさらにお手伝いをさせていただく機会を頂いた。

人事制度の改変のご経験のある方ならおわかりになると思うが、新しい人事制度の導入というのはそんなに簡単なことではない。ハイパフォーマーのインタビューを通じて、コンピテンシー・ディクショナリーの作成を行い、社内アセッサーを募集して、アセスメントのスキル研修を行い、アセスメント導入の社内向け説明資料を作成し、本番同様のアセスメントの模擬運用を行なった。この間実に1年弱の年月をかけて取り組んできた。

アセスメントの運用では、社内アセッサーの育成が鍵になるが、幸いなことに前述の4名の方が名乗りをあげてくださり、現業を抱えながら模擬面接を何度も行なってはレポートにまとめる、というアセッサーとしての訓練を積んでいただいた。

そしてようやく今年昇進候補者約60名に対して、3回に分けてアセスメントプログラム(1泊2日)を実施した。その結果についてはやはり守秘義務契約の関係で全くお話することはできないが、私が今回コラムに書きたかったのは、4名のアセッサー方のコミットメントの高さについて感動したことである。4人は全員人事部門の方ではなく、それぞれ、品質管理部門、経営企画部門、営業部門、開発部門の方で、もちろんこれまでも部下の評価をしてきた経験はあるが、いわゆるコンピテンシーアセスメントには初めて取り組む方たちである。

2年前に幹部育成プログラムで、アンケートやヒヤリングを含めて自社の風土分析を行い、昇格者の人選の基準があいまいであることを痛感し、何とかしなくてはという想いからスタートして早2年。自分自身で身にしみて感じた問題の解決には、人間オーナーシップが持てるものである。いろいろな事情で、今年のアセスメントは週末になってしまったのだが、会社を少しでもよくしたいという熱い想いから、みなさん不満もおっしゃらずに参加し、自分の担当する被評価者に対して的確な診断を行なった。昨年の模擬面接の段階では多少の不安もあったが(読んでいらっしゃったらごめんなさい)、みなさん実力をつけて、本番運用では私たちがほとんどサポートをしなくてもよいくらいの腕前になっていた。情熱があれば、知識やスキルはいくらでも身に付く、と感じた。

プログラムの最後、参加者が帰ったあとにアセッサーだけが残り、その回の参加者一人ひとりについて、合否を判断していくのだが、特に点数の足りない人に関しての議論は真剣そのものであった。見落としていることはないのか、本当に合格させることはできないのか、インタビューを担当したアセッサーに対して、他のアセッサーがつっこみをいれ、納得いくまで話し合った。

決して人事のプロではない、現場の部長クラスの人が夜遅くまで真剣に取り組んでいる姿に感動したのである。

土井 哲


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