Leadership Insights / 仕事の価値は、「十八番」の点数で決まる。

仕事の価値は、「十八番」の点数で決まる。

(2006年02月15日)

~成功者すべてに共通していること、それは…~

「仕事力」(朝日新聞社)、「プロ論」(徳間書店)などなど、いわゆる「仕事本」が相変わらず人気である。

世の中で一目置かれる「成功者」がその仕事観、哲学を生き生きと語る。仕事を通じて得られた深い気づきが「腹に落ちた言葉」に結実し、論理を超えた「持論」が生まれる。持論はある種の「真実」を明快に示してくれる。それを共有できる強い「合点感」、「納得感」が、仕事本人気の理由なのだろう。

彼らはそれぞれのジャンルで成功した(必ずしもカネや名声ということではなく、何かを達成したという意味で)。では、そんな彼らに共通していることとは、いったい何だろう?

私なりに見つけた彼らの最もシンプルな共通点、それは「自分の強みに焦点を当て、それを徹底的に活かしている」ということだ。ごく当たり前のことかも知れない。しかし、当たり前のことを実践する。それが、難しい。

私は以前のコラムでもお話した通り、コンピテンシー(=成果を生み出す行動特性)を抽出するインタビューをかなり手広く(昨年だけでも100人近く)行っている。その経験から言えるのも、高い成果をあげている人は自分の「動機」「価値観」「スキル」「知識」「経験」「人脈」等の特徴、特に強みを知り(=メタ認知)、それを仕事にうまく活かしているということだ。逆に、自分の弱みに焦点を当て、その克服に必死に取組むことで、高い成果に結び付けている人は非常に少ない。

~価値や成功体験は強みからしか生まれない~

仕事とは結局、世の中に対する価値創造・価値提供である。世の中が認めてくれる程の価値は、絶対に強みからしか生まれない。価値の大きさは強みの大きさと言ってもよいだろう。これは、個人でも組織でも同じである。強みを知り、徹底的にそれを使い切ることによってのみ、世の中で「選ばれる」価値を提供する存在となり続けられるのだ。仕事は学校のテストと違い100点満点ではない。例え平均点以下の科目がいくつかあっても、「十八番」の科目で150点、200点を出せば「勝ち」なのだ。

強みがうまく活かされれば、高い成果、すなわち成功体験が生まれる。成功体験は非常に重要だ。人間の脳は基本的に快楽主義者であり、なんらかの成功体験を味わうと、脳から報償となる物質(ドーパミン)が放出される。そして将来また報酬を得ようと(=さらに高い成果をあげようと)、自然とその行動に弾みがついていく。これを脳科学では強化学習という。また、人間はうまくいく、あるいはうまくいかないことがあまりに明白な時には頑張りが利かず、どちらとも言えないがなんとかうまくいきそうだと思える時に強いモチベーションが湧くということも脳科学でも証明されているらしい。強みを活かした成功体験は、やれれば価値は大きいが困難が伴う状況に対しても、「自分ならうまくいくかも知れない」という前向きな楽観を与えるのである。

~リーダーは強みの芽=成功体験を見逃してはいけない~

そして、特にリーダーは、自分の強みだけでなく、メンバーの強みを徹底的に見極める必要がある。一般的に、強みを見つけることより弱みを見つけることの方が簡単だ。特に、メンバーが成長途上であるときはそうだろう。しかし、弱みを克服させることに躍起になっているリーダーが率いる組織に、勝利は訪れない。イチロー選手は、スピード抜群だがパワーは劣る。松井選手は、パワーはあるがスピードがあるとはいえない。弱みに焦点を当てるということはイチローにホームランを、松井に盗塁を求めるようなものである。

では、メンバーの強みを見極めるにはどうすればよいか。その最も有効なアプローチは、成功体験を見つけることである。仕事でも、そうでなくてもいい。現在のことでも過去のことでもいい。何らかの形で顕在化した、その人の個性が感じられるユニークな成功体験を見つけ出し、その理由やメカニズムを徹底的に考えるのだ。

「人の潜在能力を見つけるのがうまい」と言われる人がいる。しかし、100%潜在的である能力を見つけるのはどんな人でも不可能に近い。きっと、うまい人はメンバーの「小さな成功体験」を見逃さない観察力の持ち主なのだと思う。私がコンピテンシーのインタビューを行うときも、その時間のほとんどは成功体験の発掘とその理由探しに費やしているといっても過言ではない。

最後に、昨年惜しくも亡くなられた、「強み探しの達人」故仰木彬、前オリックス監督の言葉を贈ります。

「得意なことをやっている時、人間は自信に満ち溢れています。組織の強みはひとりの人間では兼ね備えられない『さまざまな資質、才能を持った人間の集団』であることです。ひとりの人間がマルチな才能を備えていなくとも、それを全員で補い、刺激し合って、目標達成に向かって進んでいく。苦手なことに挑戦させて自信を失わせるよりも、得意分野で成果をあげさせるほうが、組織としては強くなるのです。」

以上

参考文献:「勝てるには理由がある」仰木彬著

高木 進吾


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