Leadership Insights / マネジメントとリーダーシップ

マネジメントとリーダーシップ

(2005年12月20日)

マネジメントとリーダーシップの違いとは何だろうか。最も重要な課題であり、多くの組織が取り組んでいるのが、マネジメント能力に加えてリーダーシップのある管理職、経営幹部の育成だ。リーダーシップの分野は多くの研究や著作があり、この違いについても多くの人が語っているが、今回は原点に戻って、特に日本の組織での弱点になる違いについて、もう一度整理して考えてみたい。

リーダーシップ論といえばコッターだが、彼はマネジメントを「正しくやる」、リーダーシップを「正しいことをやる」ことだと言っている。つまり正しいが副詞か形容詞か、別の言い方をすれば、What-How-Do-Checkの仕事サイクルのうち、与えられたWhatをHowに分解し、部下にD0させるのがマネジメントで、Whatから自分で考えるのがリーダーシップということになろう。だからこそWhat構築能力はリーダーシップの原点であり、スタートでもある。

What構築能力については今まで何度も述べてきているので、次にそのWhatをどう人を活用して実施するかを考えよう。私はマネジメントというのは、命令権限のある人に対して指示命令で人を動かすこと、リーダーシップは命令権限の無い相手に説得や納得で動いてもらうことと考えている。もちろん相手が命令権限の及ぶ人でも、指示命令により動く範囲を超えたモチベーションを引き出す能力も同じことになろう。

となると、どんな人にこの能力が必要か、必ずしも部下の数が多い人により高いリーダーシップが必要なわけではないと言うことになる。部下の数が多くなると確かにマネジメントの複雑性は高まる。しかし部下以外、例えば他部門のキーパーソンの協力やプロジェクト型組織での他部門からあるいは外部の会社から派遣された人の活用など、むしろ簡単に言うことを聞かない人を動かさないと進まない仕事の責任者こそリーダーシップが必要になる。顧客に対するリーダーシップが必要とされるコンサル型顧客接点プロフェッショナルも同じだ。

例えば知的能力と知識経験に優れ、高いマネジメント能力を持つが、リーダーシップが弱い人たちが部門長クラスに多いと、自分の部下を使ってできることばかりやるので、結果的に部門最適局所最適になり、セクショナリズムや他部門の批判で、全社最適が損なわれることにもなる。

日産自動車のクロスファンクショナルチームは、まさにクロスファンクショナルな課題に取り組む少人数のチームだが、クロスファンクショナルであるからこそ、命令権限の無いキーパーソンを説得し納得してもらい動かないと、課題達成はおぼつかない。リーダーシップを若いうちから強化しようとすれば、単に部下を沢山持たせるのでなく、このような説得納得でひとを動かす仕事、場合によっては自分よりはるかに組織序列が上、経験が長いあるいは外部特に顧客のような立場の人たちを動かす仕事をアサインしていくことが重要になる。終身雇用年功序列の組織で、正社員ばかりを部下に持ち、自分の組織内のみで解決可能な仕事ばかりをやっていると、なかなかリーダーシップが育たないわけで、そのような管理職が中国に行って、組織ロイヤルティーを持たない優秀な中国人ホワイトカラーをうまく活用できないのは目に見えている。そこまで行かなくても、女性や外国人に加えてアウトソーシングなども含めた雇用形態や働く意識の多様化が進む中、リーダーシップが不足しているようだと、組織崩壊につながりかねない。

さらにそのためには、単純に具体的な指示命令の伝達ができるコミュニケーションに加えて、抽象概念をわかりやすく伝達する能力が重要になる。「これをやれ」でなく、「こういう考え方でやれ」ということだ。野球の監督はバッターボックスの選手に逐次具体的指示が出せるが、サッカーの監督は、チームワークの取れた攻め方をできるようにするためには、普段の練習やハーフタイムでの考え方の伝達が的確にできないといけない。つまり監督の考え方を各選手が理解したうえで、瞬時に自律的に判断してもらわないと、力が出ない。

新卒から長期間適応と同化をさせてきた正社員ばかりならそれほど難しくなかったかもしれないが、ダイバーシティーやグローバルといったコンテクストで、この力をどうつけていくか、単に会社としての行動指針を徹底する仕組みに加えて、一人一人の管理職に戦略、仕事の背景や意味合い、考え方を、豊富な事例を使い自分の言葉でわかりやすく伝達する能力をつけさせることも、リーダーシップ教育の一つになるのではないだろうか。

他にももちろんいろいろあるだろうが、各企業が自社にとって、マネジメントとリーダーシップを分けて自社なりに定義し、両方とも重要なこの能力をどう教育育成していくか、オリジナルな回答を出していかなければならないのだろう。

高橋 俊介


■関連用語
ジョン・P・コッター
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リーダーシップ理論の変遷
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