Leadership Insights / (その5)アクションラーニングとは

(その5)アクションラーニングとは

(2005年04月18日)

最後になりますが、アクションラーニングという手法を通じて行った研修プログラムが最終的に参加者に、そして会社にどのような効果をもたらすかについてお話したいと思います。

第一回目に、

① 自律的な人材を育てるためには知識を付与することよりも動機・マインドセットを変えることがなによりも重要であること
② 人間には潜在能力が隠れていて、それを引き出すことが動機やマインドセットを変えるきっかけになるということ
③ 人が周囲の世界を認知するし方や思考のし方にはクセがあって、自分のクセを知り、あえて違う見方で周囲を見たり、いろいろな思考パターンを訓練をすることで可能性が広がるということ

を述べました。アクションラーニングという濃密な時間の体験、チームメンバー同士のぶつかりあい、エデューサーのコーチングやファシリテーションを通じて、まさに上記の①~③が起こります。自社を他社とベンチマーキングし、顧客の声を実際に聞き、自社の状況を客観視することによって危機感が生まれマインドセットが変わります。普段使っていなかったアタマのある部分が刺激され、会社に入ってから眠っていた部分に刺激が与えられ、新たな思考パターン、行動パターンが生まれてきます。

しかし、何よりも重要なのは一連の活動を通じて、参加者が心の中に抱いていた、ぼんやりとした問題意識が明確化され、「確信」に変わるということです。

うちの会社はたぶんこんな問題を抱えているんだろうな、きっとこんなことに取り組んだら業績も良くなるかも知れないなあ、という漠然とした思いが、うちの会社には・・・と・・・の問題があって、これを解決するためには、・・・と・・・に取り組まなければならない!という明確な認識に変わるのです。

それが明確に認識されると、2つのことが起こります。

一つは、上司や部下やお客様など他者に対して、自信をもって語り、巻き込む力、影響力が格段に向上するということです。研修を通じて参加者に接していると、よく、「うちの上司は上の方針をそのまま下に伝えるだけで、自分の言葉で語っていない」という不満を耳にすることがありますが、アクションラーニングを体験したあとのメンバーにはそのようなことが発生しません。自分の言葉で熱く語れるようになります。

二つ目は、確信があるために、その問題の解決に向けてコミットメントが生まれるということです。他人事ではなく、自分の問題として解決する姿勢が鮮明になります。

ですので、プログラムの最終回で経営者に対して自分たちが「確信」していることをプレゼンテーションし、経営者から「君たちの言うことはよくわかった。私もそのとおりだと思う。でもいったい誰がこれに取り組むんだ。」といわれると、「私がやります!」という声が出てくるのです。(注:最近では、プレゼンテーションが最終回ではなく、その後の実行段階も引き続きお手伝いをさせて頂くことが増えてまいりました)

確信に基づいて、自らコミットメントをもって取り組み、他者をも巻き込んでいけるのですから、実行力が高まります。戦略が絵に描いた餅で終わらないためにも、このような実行力を伴うリーダーの輩出は極めて重要であり、アクションラーニングはそのようなリーダー作りのためのソリューションであると思うのです。

あるメーカーでアクションラーニングのプログラムをやらせていただき、半年くらい前に最終プレゼンテーションがありました。そのメーカーにとっては、コスト削減が大きな課題だったのですが、コストを膨らませている大きな要因の一つに、生産している製品の種類が多く、多品種少量生産となってコストが割高になっていました。営業の発言力が強く、顧客が求めているから、という一言で多品種になってしまっていました。しかし、もう一度市場のニーズをきちんと調べなおした結果、品種を大幅に削減できることがわかり、その経済的影響が小さくないことも見えてきました。検討チームのリーダーは、品種を減らすことこそが、今会社が取り組むべき重要な課題であるという確信を持ち、経営者にプレゼンテーションを行いました。物静かな話し方の方ですが、おそらく静かなる情熱が経営陣に伝わったのでしょう。最近関連会社の社長に抜擢され、大きな仕事を任されることになりました。

アクションラーニングが会社側にもたらす効果は、このように、誰が真のリーダーかわかることです。チームの組成時には勢いが良くてリーダーのように振舞っていた人が、途中から息切れし、変わりに、地味だけどきちんと考えてメンバーを説得し、後半にはリーダーとしてチームを引っ張る人が出てくる、ということはよく起こります。

過去の人事考課では、優秀だと目されていた人が実はそれほどリーダーシップを発揮できず、むしろ人事考課では問題児とされていた人や目立たない人がリーダーシップを発揮するなど、人事考課とは違う結果が見えてくることがあります。アクションラーニングは長い時間参加者と接しますので、その間にどのような仕事で力を発揮する人かを見抜きデータベース化していくことで、新たなプロジェクトが発生したときにその仕事の内容に応じて誰を抜擢するべきかを決めやすくなります。

アクションラーニングという手法をより若い世代にも展開し、30代の部長、40代の経営者を生み出すお手伝いをしていきたいと考えています。


土井 哲



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