Leadership Insights / 「企業再生って、実は...。」(其のニ)

「企業再生って、実は...。」(其のニ)

(2005年01月17日)

「企業再生って、実は『配役が悩ましい』」

企業再生を考える上で、もう一つ難しい課題がある。それは、再生をどう進めるかの後にいずれやってくる(つもりの)、戦後復興対策である。前回述べたように再生の立役者は個人なのであるが、軋轢を作るのが彼の仕事であり、時には組織に痛みを伴うようなこともリードしなくてはならない。この個人でリードする治療方法は、再生後に不可逆な影を落とす。つまり、単に個人に頼ると、企業が再生に成功した暁には、彼は「企業の救世主」であるとともに「組織の大悪人」としてのレッテルも張られてしまわざるを得ないのである。そこで、企業再生には様々な「配役」の工夫が必要になる。

再生成功の次に待っているのは、成長である。この成長を牽引していくために不可欠な次世代リーダーが「大悪人」では求心力は生まれない。そこで、再生活動の中でも組織に後遺症が残るような厳しい(「難しい」ではない)施策に関しては、「汚れ役」を配する必要がある場合がある。例えば3年契約といった期間限定で悪役を買って出てくれるプロ(例えば人事のプロ)を登用したりするのである。

悪玉がいてこそ、善玉が引き立つというわけである。

また、例え将来の救世主といえども、軋轢の度が過ぎると限界が来てしまう。そこで、彼を陰に日向に庇護する「パトロン」も重要な配役である。これは言うまでもなくトップマネジメントということになるが、この役柄はなかなか演出が難しい。ありがちな「社長直属」などという錦の御旗を与える安直な庇護では通用しない。下手をするとトップも大悪人になってしまう。重要なのは「陰に日向に」という距離感で、あくまでタイミングをみて援護射撃をしたり、部下ではなく影の戦友としてメンタルにケアをしたりするのである。実は、この対応をするためには目に見えないところでトップは彼の活動をモニターするアンテナを張り巡らせなければならず、こうした時に個人主導だと目が届きやすいのである。

以前は、企業再生と言えば社長を送り込むというのが、通常であったが、このように見てくると、これがいかに難しいことかおわかりいただけるのではないだろうか。つまり「救世主」が「汚れ役」も演じるか、あるいは汚れるような施策に踏み切れないか、の二者択一になってしまうからである。前者の場合は、再生後にはやはりもう一度社長交代が待っており、後者の場合は再生そのものが危なくなるのである。

「備えよ常に。」

企業の中に、将来の救世主役を演じられる役者は決して多くはない。そして、この舞台成功の絶対必要条件はトップと役者の信頼関係なのであり、これは一朝一夕では培えない。日頃からこのような不測の事態に備えた人材の発掘や、コミュニケーションのあり方にどれほどこだわれるか、という実は当たり前のことが本当にできているかが結局鍵なのである。

「備えよ常に。(Be prepared always)」というボーイスカウトの精神を思い起こすのは私だけだろうか?


中串 昌弘



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