Leadership Insights / (その3)アクションラーニングとは

(その3)アクションラーニングとは

(2004年12月16日)

筆者自身が関わったアクションラーニング(AL)プロジェクトを紹介しながら、エデューサーがどのように参加者に働きかけどのような価値を提供していくのか、その一部をお話します。(守秘義務の関係で社名やプロジェクトの具体的なことが語れないため、歯切れが悪くなっているところはご容赦ください。)

1)不偏的な立場で深掘りする

エデューサーの提供する価値の一つは、その組織の中のしがらみやポリティクス、あるいは、その組織の人の陥りがちな思考パターンに囚われずに現状を正しく客観的に見るところにあります。

ある一部上場のメーカーA社は、長い間の成功体験から、少し品質管理に甘い点が出てきて、結果として不具合のある製品を市場に出してしまい、お客様から不評を買いました。新任社長は、このような不具合が放置されてしまったのは、組織風土に問題があると考え、次世代役員候補である部長たちにこの問題の解決を指示し、私たちがお手伝いをすることになりました。

組織風土問題を解決する場合、その問題の構造定義や原因の特定は社内の人には意外と難しいものです。なぜなら、その組織の人にとってはあまりにも常識として体に染み込んでしまっているため、何が問題なのか、異常なことなのか、見えにくくなっている場合が殆どだからです。問題の構造を知るために「因果関係図」というツールがありますが、今回はまず私がファシリテーター役になりながら、問題が発生してしまう背景を聞き出していき、因果関係図にまとめていきました。ただし途中で、第三者としての視点で考えたときに、「もっと違う原因があるのではないか」と感じられるようなところ、「どうも社内の人の説明に納得がいかない」と感じられるところについて特にしつこく質問を繰り返し、もっとこういうことは考えられないのか、本当はこうなのではないか、ということを投げかけていきました。するとだんだん、「確かにそうかも知れない」「われわれはそこには気がつかなかったが、言われてみれば納得できる」というような反応が返ってきて、だんだん、私にとって納得感のある因果関係図になり、さらに、より本質的なものとして、その会社の社員が囚われているある価値観の存在がわかりました。

しかし、このような机上の議論だけでは一部の人の意見にすぎず、間違っている可能性もあるので、本当にそのような価値観が存在し、そこからいろいろな問題が派生しているのかをアンケート調査を設計して社員に投げかけ相当数のサンプルを集めました。するとほぼ私たちが描いたことが実際に起こっていることが明らかになり、どこに手をつければよいか明確に見えてきたのです。

このように、問題の本質をメンバーとともに明らかにしていく、しかも何物にも囚われずに不偏的な立場から解いて行くというのは、エデューサーの重要な役目です。

2)新たな切り口で突破口を探す

一部上場の大手IT企業B社の子会社であるC社。この企業はB社から3年間で売上を2.5倍に増やすことを命題として与えられました。

平均して年率40%以上の成長を実現するのは、ベンチャー企業ならいざ知らず、すでに売上規模も大きい大手企業にとってはかなりハードルの高い目標です。いくら成長性の高いIT業界とは言っても3年間で売上を2.5倍にするためには、M&Aも含めてかなり斬新な打ち手が求められます。

まずは、参加者である部長たちに、「今の事業の延長で最大限に頑張ってどのくらいの伸びが可能か」を尋ねましたが、みなさん口を揃えて1.5倍が限度だとおっしゃいます。このギャップの大きさには戸惑いましたが、参加者の間に、B社側からの期待には絶対に応えたいという想いがあり、ネガティブな感情を抱いている人がいらっしゃらなかったのは幸いでした。そうなれば私たちエデューサーとしても何がなんでも成長のシナリオを作りたいところです。競争が激しくなりつつある業界の中で、顧客にとってのアンメットニーズは何であるか、同業他社が出来ていないところは何か、また、今後の顧客側に発生するであろう環境変化についての議論にも時間をかけました。これから何をすべきかを考えるのですから、これから顧客がどのようになっていくのか、これから競合はどう動くか、未来を予測することが不可欠になります。これまでの延長線上では目標値に届かない以上、このような作業を通じて新たなニーズを掘り起こすしかありません。

そのような視点から議論を深めていったところ、一つの切り口がみつかりました。しかし、実はその領域はまさに親会社のB社も成長のために狙っている領域であり、かつまた、C社にとってもビジネスシステムを大幅に組み替えなくては取り組めない領域だったのです。そこでさらに議論を進め、この領域に対して新たなビジネスシステムを確立しながら、B社とC社が連合して取り組むことをC社側からB社に提案することにしました。

大手企業の場合、グループ会社や関連企業などが多数あり、過去の経緯の中で事業の切り分けが行われたものの、その後の市場の変化で、その切り分け自体が事業成長にとって足枷になっている場合も多いように思います。そのような場合に、そのような仕切りを取り除いて、顧客(=C社の顧客)へのValue Propositionの明確化という観点から、ビジネスシステムの変革を促すのもエデューサーの重要な役割です。

3)本人のやりたいことを明らかにする

一部上場の消費財メーカーD社は、成熟期にある業界にはありますが、シェアはナンバー1。さらなる利益成長を追求していくために、新規事業の開発に取り組んでおられます。この数年、社内でベンチャー支援制度を作ったもののなかなか大きな事業が生まれず制度の見直しを考えていたところ、ある企業の事業開発プロジェクトで弊社が一定の成果を上げたという実績をお知りいただき、縁あってお手伝いをさせていただくことになりました。

私がお手伝いしているのは将来を期待されている若手の方で1対1のコーチングです。この方の事業アイディアは、あるタイプの商品が90%以上を占める市場で、そうではない新製品=市場規模が小さく、浸透するにしても時間がかかるもの、を少しでも多くの人に受け入れられるよう啓蒙を行うタイプの事業で、一般的には成功確率の低い、あるいは成功してもそれほど大きな利益にはつながらない事業です。おそらくベンチャーキャピタル会社なら投資対象にはしないと思われる案件ですが、この企業のすばらしいところは、赤字をずっと垂れ流すような事業はもちろん認められないものの、規模には必ずしもこだわらずに、会社にとって取り組む意義があると思えるものにはどんどんチャレンジせよ、という風土があるところです。

とはいえ、やはり事業としてきちんと成り立つかどうかの見極めは必要ですから、市場の規模、参入障壁の特定とその排除方法、収益性などを詰めていきました。特にまったく新しいタイプの製品を投入する場合、ターゲット客を具体的に想定してプロファイリングを行い、そのターゲットにどのような価値を提供するのか、また、競合の出現に備えてどのように優位性を構築するかなどが重要な検討テーマになります。特にターゲットのプロファイリングでは、実際にそのようなターゲットに近い人を集めてグループインタビューを行ったり、1対1で長時間のインタビューを行ったりすることになります。 このプロジェクトでは、なかなかこちらが想定している仮説が証明できず苦労しました。

このような場合エデューサーがしなくてはならないのは、フィールド調査の結果を見つめつつ、必要に応じて事業アイディアを変えていく、新たなアイディアを考えるよう促すことにあります。ただし、非常に難しいのは、結局最終的に立ち上げるのは私ではなく、参加者なので、私がいくら自分では面白いと思うアイディアが浮かんでも、それを押し付けることはできないところです。ですので、もし当初のアイディアが何らかの点で受容性が低いことがわかってきたら、色々なアイディアを投げつつ、熟考していただき修正を促していくことになります。私のアイディアに共感していただき、それが参加者のアイディアに取り込まれていく時、私のアイディアに参加者のアイディアが加わって更に新たなアイディアに発展する時には、エデューサーとして非常に喜びを感じます。(続く)

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土井 哲


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